「誰かの存在」を意識した発想本はTRPGとも好相性 −『広告コピーってこう書くんだ!読本』(谷山雅計, 2007)

発想本は好きなジャンルなんで、ついつい見ちゃいます。そんな中でも、『広告コピーってこう書くんだ!読本』ってTRPG者にも良いなあーと思ったのです。広告コピーって人に何らかの影響を与えるために考えられるもんですもんね。「誰かの存在」を意識した、著者の発想の経験 / プロセスの話というのが、とても参考になります。

目次からざっくり、良いなーをピックアップ。

広告コピーってこう書くんだ!読本
谷山 雅計
宣伝会議
売り上げランキング: 2778
おすすめ度の平均: 5.0
4 コピー指南書
5 2時間で読めるけど、なるほどの一冊。
5 コピー屋さんってまっとうだったのだ
5 大切なことはいたってシンプル
5 納得!

  • なぜ「たくさん」書かなければいけないか : 根性論でも「下手な鉄砲でも・・・」でもなく、多くの切り口や視点を探すためにたくさん「書き散らかす」。書き散らかす事ができないと、選ぶ事も磨く事も上手になれない。
  • 一晩で100本コピーを書く方法 : 知り合いを100人思い浮かべ、その人達とコピー対象との関係を考える。『週間住宅情報』のコピーは「住宅と様々な人との関係」を書く事で、単純な「○件の情報が載ってます!」より印象的な広告になった。
  • 人はコピーでウソをつく : 「古本屋に若者を」という課題を学生に出すと、「あるページに前の持ち主の涙の跡があって、自分も同じところで感動した」と書いてくる人がいる。けど、「涙の跡を見つけたことがある人?」を聞くと誰も手をあげない。世の中の決まり文句や「なんとなく」は疑った方がいい。
  • 書き手のヨロコビ、受けてのヨロコビ(二毛作ジェルのワナ)。 : 受け手は、書き手の「できた!」という気持ちとは無関係にコピーだけを見るもの。書き手は喜んだけれど、受け手からすれば全然嬉しくない言葉に・・・という事もある。意味で書いて、生理でチェックする。
  • 葉っぱから森を作ろう : 学生の場合、せっかく良いコピーを書いても、その1本で終わってしまう。同じ考えで別のものを作ったり、展開を広げる事もできるはず。”葉っぱ”でとまるのか、そこから”木”や”森”を作っていけるのか。
  • おじいちゃんにプレゼントを選ぼう。 : 若い人の中には「自分自身の好みが表現に出てこそ、自分のクリエイティブなのだ」と頑なに信じている人がときどきいる。著者は広告をつくるときに、「おじいちゃんにプレゼントを選ぶようなものだ」といつも思っている。あらゆる思考をつくしたうえで、おじいちゃんにとってベストな一着をプレゼントできたなら、その一連の思考や作業がすべて「自分の表現」ではないか。自分の好きなものだけが自分のクリエイティブ?
  • スキがあるほうが、よくモテる : 話題になる広告づくりの条件の一つは、一緒に遊べるものをつくってあげること。「参加性」。ツッコミたい、イジりたくなるスキを、上手に広告のなかにつくっておく。
  • 本当にすごいアイデアって(小さな工夫)。 : 「コンビニでこんなサービスやイベントをしてくれたらすごくいい、と思えるアイデア」を課題に出された時、学生たちは「マドンナのコンサート」や「シアター化」を考えた。糸井重里さんは「買ったカップラーメンにその場でお湯を入れてつくれるサービス」を考えた。一見地味に見えても、世の中の人が本当に必要としていて、まだ存在しないものを見つけ出す。単に奇をてらったことよりも、本当にすごいアイデアだと著者は思う。

創造性を発揮すべきところは・・・

実は部屋を片付けてて久しぶりに読み返したわけですが。特に、「おじいちゃんにプレゼントを選ぼう。」が良いなーと思いました。ここ、ページの端を折ってブックマークしてあったので、読んだ当時も良いなーと思ってたんでしょう。変わってないってことかー(笑)

自分の好きなものを盛り込んだものだけが「自分の表現」ではなく、誰かを思って試行錯誤したその一連の思考や作業すべてが「自分の表現」。シナリオ作成やセッション運営でも言える事かなあと思います。自分の好みを追求する事も、もちろん他の参加者へ未知の楽しさを提供する「自分の表現」でありますが、徹底的に他の参加者の事を考えて作成・運営する事もまた「自分の表現」なんだと気づかせてくれます。

それから、この本では到るところで、「誰かを喜ばせるものが最も素晴らしいクリエイティブなんだ」って言ってます。なんかブログ界隈だと「プレイヤーがすべき事、マスターがやるべき事」といった義務を感じさせる記事も見かけますが、こういうとこ、まさに創造性を発揮するところだと思います。「どうすれば自然な形で楽しみながら分かってもらえるだろう?」、「そういうセッションを実現するために自分にどういう働きができるか?」のアイデアにトライできれば、それはとっても素晴らしい事じゃないでしょうかー。