シナリオパーツ集め『鳥姫伝』 ―トライ&エラーの物語は「分かりやすく・発展する」シナリオのネタに

毎度遊びに行くたびにSF小説武侠小説を貸してくれる友人がいて、そっから貸してもらったのがこの本。西洋の人が書いた中華ファンタジーというちょっと不思議な作品です。で、これを読んで「TRPGのシナリオに丁度いいなあ!」と思ったのでした。

なぜって、このお話は「トライ&エラーの物語」なのです。病気の子供たちを助けるために薬を捜し、持ち帰った薬では効き目が足りないと分かるやまた旅に出て。薬を求める旅を重ねるうちに、鳥姫にまつわる伝説と謎に触れていきます。村の遊びに隠されていた伝承、幽霊たちの嘆き、鳥姫の物語、王の素顔は!?・・・とまあこんな感じで、「中身が発展していく繰り返しの物語」なんであります。

こういうシナリオって、とっても分かりやすい。分かりやすい上に次の展開が楽しみ。まあ、トライ&エラーの構成に気づいてもらう為のアレコレが、作為的に思われちゃいそうですが(NPCハンドアウト・トレーラー等)。インパクトあるNPCとの出会いや、彼らの問題解決を手伝うかの選択、さらに実はこんな伏線が!って持っていければ楽しそうな感じ。

鳥姫伝 (ハヤカワ文庫FT)
バリー ヒューガート
早川書房
売り上げランキング: 541448

ネタをとるなら

  • 期待感と分かりやすさ ・・・ キャラクター(PC・敵・味方)がある行動をトライ&エラーする。繰り返す。1回目・2回目(・3回目)のそれぞれの差を上手く見せられれば、期待感と分かりやすさを盛り上げられそう。
  • 1つの伝説(エピソード・事件)を、2つの視点から見る ・・・ Aを追いかけていたら、実はBにもたどり着いてしまう等。Aには一見関係なさそうな敵が、Bを理由に妨害してきたり。あんまり複雑になりすぎないようにする!
  • じーさんキャラクターの魅力 ・・・ 李高が、自分の昔話を使って十牛を慰めたり奮い立たせたり説得したりするシーンがたまらん! 高齢のキャラクターの魅力を出すのにすごく良さそう。

概要よりはもうちょっと詳しいあらすじ

第1部 はじまりの説明
  • 唐代の中国が舞台。ある辺鄙な村で、8歳から13歳のこどもたちが一斉に病に倒れる。主人公・十牛(じゅうぎゅう)は北京で李高(りーかお)と出会い、この老賢者の見立てで幻の薬草「大力参(だいりきじん)」を求める旅に出る事になった。
  • 李高の過去が語られつつ、皇祖娘子(こうそじょうし)の宝物蔵から「力参」を盗もうと計画をたてる。孫娘・絶娘(ぜつじょう)へ近づく事で皇祖娘子の館へもぐりこむ。館では、絶娘の父・候(ほう)から大力参の話を聞いたり、幽霊となった男女を救い、その迷える原因をつくった絶娘に仕置きしたりも。絶娘の葬儀が行われる中、力参を盗み出した十牛と李高。さらに、ひょんな事から大力参の持ち主を知る。
  • 村に帰り子供たちに力参を処方する。子供たちの顔に笑みが戻るが、起き上がるまでの回復には到らなかった。
第2部 迷宮につぐ迷宮、怪物
  • 再び旅に出た十牛と李高は、大力参の持ち主・秦王(しんおう)に近づくため、財務官の兎鍵(とけん)と知り合う。罪人として秦王と対面した2人は斧で斬りかかるが、傷をつける事すらできない。そして、十牛と李高は迷宮へと落とされてしまう。迷宮の奥で力脚人と幽霊、小さな笛を見つける。
  • 力脚参を処方された子供たちは、村に伝わる遊びを繰り返す。周囲の大人の呼びかけにもこたえず、自分達の世界に遊ぶように歌う。
  • その頃、秦王と兎鍵は税金徴収のたびに出ていた。後を追って砂漠へ向かう十牛と李高。そこにはさらなる迷宮と怪物たち、そして水晶玉と幽霊、大力参の腕。砂漠の迷宮を脱出した後には、鍾乳洞の迷宮。消耗する李高を背負い、十牛は山の中心にいたる道と宝物の山、そして幽霊の嘆き、人参の頭、青銅の鈴を見つける。

「牛よ、ある謎の理由により、われわれの大力参探索と女中たちの幽霊は相互に結びついとる。子供らの遊びや庫福村や龍枕、謎詞、羽、鳥は飛ばなくては、秦王――ぜんぶ秦王がらみだな、考えてみりゃ――他になにがあるかはみほとけのみぞ知るだ」

第3部 第1部からの伏線を回収するカタルシス
  • 既に予想していた通り、大力参の腕と頭は完治には到らなかった。子供たちを癒すには大力参の心臓が必要だと。
  • さらに秦王を追って兎鍵の館へ。暗殺をはかるものの逆に牢獄へ入れられてしまう十牛と李高。しかしそこで再会した候から鳥姫にまつわる伝説を聞く。なんとか牢獄から脱出した十牛と李高は、峨眉山頂に住むという老人のもとへ。山の老人は秦王へ不老不死の秘密を売った師であった。

「奇怪千万なこの探索の答えは、候恐妻が三分の一教えてくれ、今また山の老人が残る三分の一を教えてくれた」

  • 秦王を倒すために、それから鳥王の羽と金の冠を取り戻すために、玉座へ。・・・あとは、いわゆるクライマックスとエピローグです。秦王の正体、不老不死の秘密とは? 鳥姫はどこにいるのか、子供たちの病気を癒してくれるのは誰!? といった内容がどどどーっと!


他にも、子供たちの病気のかかり方なんかもネタになりそう。迷宮も、地下・砂漠(マドハンドみたいなのがおっかけてくる!)・鍾乳洞(坊さん+トラップ!)とバリエーションに富んでて面白い。呪いをかけられた女の子がかわいそうで、こんな罠も良いなあと思った。排除できなさそう・・・。