シナリオパーツ集め『鳥姫伝』 ―トライ&エラーの物語は「分かりやすく・発展する」シナリオのネタに
毎度遊びに行くたびにSF小説と武侠小説を貸してくれる友人がいて、そっから貸してもらったのがこの本。西洋の人が書いた中華ファンタジーというちょっと不思議な作品です。で、これを読んで「TRPGのシナリオに丁度いいなあ!」と思ったのでした。
なぜって、このお話は「トライ&エラーの物語」なのです。病気の子供たちを助けるために薬を捜し、持ち帰った薬では効き目が足りないと分かるやまた旅に出て。薬を求める旅を重ねるうちに、鳥姫にまつわる伝説と謎に触れていきます。村の遊びに隠されていた伝承、幽霊たちの嘆き、鳥姫の物語、王の素顔は!?・・・とまあこんな感じで、「中身が発展していく繰り返しの物語」なんであります。
こういうシナリオって、とっても分かりやすい。分かりやすい上に次の展開が楽しみ。まあ、トライ&エラーの構成に気づいてもらう為のアレコレが、作為的に思われちゃいそうですが(NPC・ハンドアウト・トレーラー等)。インパクトあるNPCとの出会いや、彼らの問題解決を手伝うかの選択、さらに実はこんな伏線が!って持っていければ楽しそうな感じ。
ネタをとるなら
概要よりはもうちょっと詳しいあらすじ
第1部 はじまりの説明
- 唐代の中国が舞台。ある辺鄙な村で、8歳から13歳のこどもたちが一斉に病に倒れる。主人公・十牛(じゅうぎゅう)は北京で李高(りーかお)と出会い、この老賢者の見立てで幻の薬草「大力参(だいりきじん)」を求める旅に出る事になった。
- 李高の過去が語られつつ、皇祖娘子(こうそじょうし)の宝物蔵から「力参」を盗もうと計画をたてる。孫娘・絶娘(ぜつじょう)へ近づく事で皇祖娘子の館へもぐりこむ。館では、絶娘の父・候(ほう)から大力参の話を聞いたり、幽霊となった男女を救い、その迷える原因をつくった絶娘に仕置きしたりも。絶娘の葬儀が行われる中、力参を盗み出した十牛と李高。さらに、ひょんな事から大力参の持ち主を知る。
- 村に帰り子供たちに力参を処方する。子供たちの顔に笑みが戻るが、起き上がるまでの回復には到らなかった。
第2部 迷宮につぐ迷宮、怪物
- 再び旅に出た十牛と李高は、大力参の持ち主・秦王(しんおう)に近づくため、財務官の兎鍵(とけん)と知り合う。罪人として秦王と対面した2人は斧で斬りかかるが、傷をつける事すらできない。そして、十牛と李高は迷宮へと落とされてしまう。迷宮の奥で力脚人と幽霊、小さな笛を見つける。
- 力脚参を処方された子供たちは、村に伝わる遊びを繰り返す。周囲の大人の呼びかけにもこたえず、自分達の世界に遊ぶように歌う。
- その頃、秦王と兎鍵は税金徴収のたびに出ていた。後を追って砂漠へ向かう十牛と李高。そこにはさらなる迷宮と怪物たち、そして水晶玉と幽霊、大力参の腕。砂漠の迷宮を脱出した後には、鍾乳洞の迷宮。消耗する李高を背負い、十牛は山の中心にいたる道と宝物の山、そして幽霊の嘆き、人参の頭、青銅の鈴を見つける。
「牛よ、ある謎の理由により、われわれの大力参探索と女中たちの幽霊は相互に結びついとる。子供らの遊びや庫福村や龍枕、謎詞、羽、鳥は飛ばなくては、秦王――ぜんぶ秦王がらみだな、考えてみりゃ――他になにがあるかはみほとけのみぞ知るだ」
第3部 第1部からの伏線を回収するカタルシス
- 既に予想していた通り、大力参の腕と頭は完治には到らなかった。子供たちを癒すには大力参の心臓が必要だと。
- さらに秦王を追って兎鍵の館へ。暗殺をはかるものの逆に牢獄へ入れられてしまう十牛と李高。しかしそこで再会した候から鳥姫にまつわる伝説を聞く。なんとか牢獄から脱出した十牛と李高は、峨眉山頂に住むという老人のもとへ。山の老人は秦王へ不老不死の秘密を売った師であった。
「奇怪千万なこの探索の答えは、候恐妻が三分の一教えてくれ、今また山の老人が残る三分の一を教えてくれた」
- 秦王を倒すために、それから鳥王の羽と金の冠を取り戻すために、玉座へ。・・・あとは、いわゆるクライマックスとエピローグです。秦王の正体、不老不死の秘密とは? 鳥姫はどこにいるのか、子供たちの病気を癒してくれるのは誰!? といった内容がどどどーっと!
他にも、子供たちの病気のかかり方なんかもネタになりそう。迷宮も、地下・砂漠(マドハンドみたいなのがおっかけてくる!)・鍾乳洞(坊さん+トラップ!)とバリエーションに富んでて面白い。呪いをかけられた女の子がかわいそうで、こんな罠も良いなあと思った。排除できなさそう・・・。