満足感の仕掛け ―大人だって名作や古典を読みたい「新潮文庫の100冊」へ

見かけるたびに気になりつつ、でも手を出す勇気はなくて見逃していた「夏の100冊」系キャンペーン。今年はなぜか無謀にも「ああ『新潮文庫の100冊 2010』を読んでみたい」と思ってしまい、図書館で借りたり図書館待ち切れずに買ったりしてるのです。

・・・が!しかし!なんだかもう早やくじけそうになってます。つくづく、このボリュームは明らかに夏休みに突入する学生向けだよなーみたいな。なので是非、新潮社の人には社会人向けの「プラチナ・セレクション10冊」みたいなのをお願いしたいです(´・ω・`)

「夏の」100冊を読むには何日必要?

2010年の新潮は、2冊読んで応募するとヨンダナがもらえます。このキャンペーン応募締め切りはというと・・・9月25日なんです。まあ10月に入っちゃうともう紛れもなく「秋」ですもんね。9月も微妙なくらいですよね。

そう、夏の100冊というからには、せめて9月中に読んでしまいたい気持ちです。

そうすると、だいたい7月初めくらいから店頭に本や読書案内冊子が並ぶとして、7・8・9月で100冊読むのが理想。100冊÷90日だから、1日あたり「1冊+α」。確かに、『春琴抄』とか『人間失格』とかごく薄いのもあるし、夏目漱石芥川龍之介なんて教科書の定番ですからねー・・・っていやいや、私には厳しいんですー。

うっかりローマな本を読み始めたり、ご近所のモカちんが漫画を30冊オーバーで貸してくれたりして、つまり文庫ばっかり読んでるわけにもいかず。さらにこの時期ってーと、色んな人が「お勧めのxx冊」とか記事を出してくるので、読みたいものが溜まっていくとです。

あーあの、もちろん、仕事と家事があってその少ない時間をやりくりしてるとアレなわけで、別に飽きっぽいってのは多少あるけど致命的なアレじゃないですよと言い訳をしつつ。

そんで、やっぱ「夏の100冊」系は学生向けなのかなーとしょんぼり気分になってるところ。

社会人にもちょっとした夏の満足感をください

私は学生時代、古典や名作と言われる本をほっとんど読んでなくて、社会人になってから「読みたい!」熱が高まってます。なんでと言われてもアレですけど、ひとつは懐かしさ。教科書に掲載されてたものや問題集で扱われてた作品をもう一度読みたい、全文を読みたい、という気持ちになります。もう一つは、面白い本を読みたいから。長い間認められてきた作品達だから・・・という期待です。まあ実際読めば、好みもあるんでしょうけどねー。

で、こういう需要と弱音に向けて、新潮社は100冊の中からさらに厳選した「プラチナ・セレクション10冊」とか作ると良いと思うます(´・ω・`) あくまで100冊の中からね。

コンパクトな単位で提供する

10冊なら、1週間に1〜2冊ペースで読んで2ヶ月(7月・8月)で終わるですよ。忙しい人や普段あんま読まない人が「頑張ったなー」て自己満足に浸るにもキリの良い冊数かと思います。

さらに、コンパクトな単位は、=満足感を高めるという事にも繋がります。冊数に追われて次々に新しい本を読むより、余裕のある冊数をゆっくり読む方が、私は「読んだ」満足感が高いと思うので。

読前・読中・読後のお作法というかお楽しみというか、私だけかなーえへへ。目次読んで解説読んで、本文読んで、読んでる最中に読み返して、フレーズを抜書きしたり、解説をまた最後にデザート気分で読んで、読後は歩いている時に本の中身を反芻したり、もう一度読み返したり、だらだら考えたり。どっかに書き留めるのも良い。なんとて、「この本の何が、どんな表現が、どんな台詞やシーンが私を感動させるのか?」を考える事は読書の楽しみのひとつというかー。

まあそう、なんというか、文章を目で追うだけが読書じゃないので、その余地がある冊数だと良いですねって事で。

本の背景と一緒に提供する

絵画や彫刻もそうですけど、あるモノを楽しみ尽くすのに背景情報はあると良いと思いますー。

もちろん、本を読んで素直に感動した経験も重要なんですが、所詮自分の経験に照らし合わせた感想しか持つ事ができません。その当時の常識と現代の常識の違いを意識しないで、「なにこの登場人物?」という感想しか持てないよりは、時代背景や作者の経歴を考え合わせて作品を「鑑賞」できる環境がった方が良いかと。

あるいは、本の良さって物語の筋だけでなく表現方法や構成、時にはパロディや古典の復興的な「意義」もあります。歴史が分からないとどんなに新しい試みだったか、その作風がどう評価されていたとかも分からないのでもったいない。

なので、100冊系のキャンペーン中には、サイトやイベントで作品の背景情報を補足してくれるとちょう嬉しいです。よくある、巻末についている解説とかを、もっとビジュアルに訴える感じで、作品が書かれた時代背景や作者の経歴、作品の傾向、作品グループなどなどをー。

ハードルの下げ方

10冊厳選というと、「2010年版スペシャルカバー」で10冊が選出されてます。普段本を読まない人にも読んで欲しい、手にとって欲しくて何らかの打ち手を、というのは分かりますが、ハードルの下げ方って他にももっとあると思います。

新潮社は他の出版社より多少、お硬いイメージが(私は)あるので、あくまで本の中身や質の良さで勝負したらいいのになーと思います・・・。スペシャルカバーはその点、安易な集英社の後追い*1でなくて上品な感じになってましたが、あれって当初の目的である「普段手にとってもらえない人にも・・・」は達成してるんかしら、とも。

(まあ、三島由紀夫金閣寺』が金ピカのカバーだったのはえらい笑っちゃいました。でも、ヘミングウェイ老人と海』は明らかに普通のカバーの方がかっこいいと思います!芥川龍之介の『鼻・羅生門』もあのイラスト結構好きなのだけどなー。)

社会人の勉強熱を利用して、大人向けに満足を与える仕掛けを提供していったら良いのにーと思います。達成しやすい冊数、インテリを気取れる外部情報・・・まあ、私が嬉しいってのが一番ですけどヽ(`・ω・´)ノ それはそれで!


と、色々と願望を書いたところで、とりあえず「今年は『名作』カテゴリを制覇する」にスケールダウンして頑張りますー・・・。

*1:漫画家にカバーを描いてもらってたアレ