京都の「美」を知る3冊 −美術、そして街並みと日常の京都



京都に行きたいです。去年イタリア行ったんですが、そしたら京都に行きたくなりました。ローマと京都は、どちらも長い時をまたいで中心地だったところです。美術品も歴史建造物もどっさり。まだいつ行くかは決定してないですが、1泊2日くらいで観光コースを用意してます。いつでも行けるようにー

参考にした本の中で、良かったものをメモ。

  1. 布施英利『京都美術鑑賞入門』
  2. 川崎清 他 『仕組まれた意匠―京都空間の研究』
  3. 柏井壽『極みの京都』

布施英利『京都美術鑑賞入門』

東京芸大美術学部の准教授が、主に京都の芸術作品について解説した本です。動機になったのが「息子の修学旅行」だったようで、とても読みやすい・分かりやすい文章で書いてくれてます。また、名所・美術作品・芸術家の分類でそれぞれ解説してくれているので、ざっと観光名所を把握するのにも良いし、テーマ別の読みものとしても面白いです。

この本の好きなところは、例えば金閣寺の美しさを解説するのに、メインの金閣寺だけでなくその庭や周辺の景色、垣根といったものまで含めて「金閣寺の美」と言っているところです。しかも歩いている目線で書いてるところが憎い。この通り歩いてみたいなーって気持ちになります。

順路にそって歩くと、ほぼ正面からの金閣寺を見て、横に歩いていき、後ろにまわり、そのあとに坂道を登る。坂道ではもう金閣寺は見えないが、それでも道は続く。
なぜ、何もない道を歩かされるのか、と思ってはいけない。金閣寺を見た後に、長い道が続くからといって、罰ゲームではないし、無駄な回り道でも無い。そのどれもが金閣寺の要素を構成しているものであり、そういう全体が味わえた時、はじめて金閣寺を見たといえる。最初の、ぱっと見の一瞬だけで、金閣寺を鑑賞する時間が終わってはいけない。
布施英利『京都美術鑑賞入門』p15

「第1章 美の名所」では金閣寺から桂離宮、奈良の法隆寺まで9か所を解説してくれてますが、私はぜひ「庭園」を見たい!と思いました。竜安寺天竜寺です。ここの解説を読んでると、遠近法や黄金分割といった用語が登場し、「西洋美術的な美がベースになっている」のだそうです。日本の、日本らしい名所を見ているはずなのに、そこに西洋との共通項があるなんて不思議な感じがします。この辺の日本史はさっぱりアレなんですが、海外から入ってきた知識を元にしたんでしょうか、それとも文化の差を超える普遍的な「美」というものがあるんでしょうか?


あと全然京都と関係ない余談ですが・・・
同じ著者の『死体を探せ!―バーチャル・リアリティ時代の死体』も面白かったです。「(うろ覚え)普段の日常で見慣れている人体パーツを、例えばパーツだけで存在させるとか歪ませた場合、ものすごく気持ち悪く感じる」、みたいな事が書かれていたのですが、諫山創進撃の巨人』を読んでて納得しました。スケールが違うだけでえらい気持ち悪さですわ・・・

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布施 英利
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川崎清 他 『仕組まれた意匠―京都空間の研究』

ローマでは街並みの美しさにびっくらしました。そしてベルニーニが彫刻だけの人じゃないって事を思い知ったわけですが、だから、京都の「街並みの美しさ」について知りたいと思いました。観光名所や歴史的な建造物だけでなくて、いわば普通の生活空間での建築美が見たいなーと。そんな本無いかなと思ってましたが、ほんとに良い本がありました。

京都大学・工学部の教授たちによる、京都の街並み、建物のパーツ、寺院の参道、といったもののスケッチが掲載されてます。まずは単純に、たくさんの小路の名前、街並みの名前や構成、建物パーツ毎の意味や用途、寺院の平面図や目線での風景の見え方といったもののスケッチ類を見るのが楽しい。そして、スケッチに添えられた建築的な解説、工夫について知るのも楽しいです。

京都の町を魅力的なものにしているのは、伝統的な町屋が、時代を超えた美しさを備えているからだけでなく、通り自体がある種の人間味豊かな生活感を醸し出しているからであろう。
京都の通りには、公共性が強く出ているのである。景観が美しく調和がとれているのは、1軒ごとの町屋の手入れだけでなく、住み手の人たちが一貫して、通りを囲んだ空間全体を町並みとしてつくりあげてきたからであろう。
川崎清 他 『仕組まれた意匠―京都空間の研究』p17

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柏井壽『極みの京都』

京都生まれ、京都育ちの著者による、京都の魅力を解説した本です。いかにもな名所に行くよりも、観光客向けの看板出したお店に行くよりも、京都検定を受けるより、もっと「京都」を堪能する方法や場所があるんですよ!って感じの。

単なる歴史的事実を知るだけなら、書物、或いは今やインターネットの情報で十分だ。「建礼院門」と「寂光院」の関係で、もっとも大切なのは、大原の里人たちの人情を知ることなのではないだろうか。1000年もの昔、悲劇的な平家の滅亡という歴史的事実があり、それを単なる過去の事象としてではなく、1000年の時を経て今もなお、まるで残り香のように、「紫漬け」という形で歴史を語る都、それが京都なのだ、ということを知ってほしいと切に願う。
柏井壽『極みの京都』p19

私は「第4章 『普通の京都』を極める」が面白かったです。何も決めずに適当に駅を降りて、周辺を歩くだけでも楽しいのだ!を説明するのに、著者の歩いた実例コースを掲載してます。通りやお店の名前、建物の名前つきの地図があるので、ちょっとこのとおり歩いてみたく・・・だと、全然ぶらり歩きじゃなくなりますが。

また、「第7章 京都の名所を極める」は参考になります。混雑しない、人並みと逆流する散策コース例が載っていてなるほどーと。秋の紅葉が見たいなら、シーズン真っただ中の秋に行くより、12月はじめの初冬の頃の方が人の姿が少なくて狙い目、などなど。

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これで多少は「見損ねた!感」は減らせるといいな・・・。見るもの多いから、また来ても良いんですけどね。むしろ、『京都美術鑑賞入門』読んでたら、奈良の法隆寺にも行きたくなっちゃって無間ループですわ(´・ω・`)